子育て相談室⑥~反抗期への対応
中学生の親にとっての試練とも言える反抗期、こじらすと家庭内で暴れてゲームのコントローラーをディスプレイに投げつけることもあるそうです。この山場を大火なく乗り切るための心構えをみていきましょう。
心得其の一:反抗鬼を避けてはならない
反抗期には個人差があり、全くないしはほとんど発現しない子もいます。他所のご家庭から「うちの子は反抗期がなかった」なんて聞くと渦中の保護者様としては羨ましくなってしまうかもしれませんが、反抗期は子どもの正常な成長過程であり、決して忌避するようなものではありません。反抗期は子育ての失敗がもたらしたものではなく、むしろ成功したからこそ辿り着いた関門であるといえます。
「ああ、とうとうここまで辿り着いてしまったか。」
と、ここまでこれた自分と我が子の道程を思い返しながら、心して反抗期と向かい合うようにしましょう。子育てでも勉強でも、困難にぶつかったとき最も近道なのは下手に迂回しようとせずにまっすぐ乗り越えることです。受験という困難を控えた子どもにお手本を見せるつもりで、腹を決めてぶつかっていきましょう。
心得其の二:反抗鬼と戦ってはいけない
反抗鬼に対処する上で最も大切なのは気持ちを落ち着けることです。子どものペースに合わせて売り言葉に買い言葉、といった状態になると反抗鬼は凶悪に成長していきます。これは私の長らくの経験からまず間違いないと思われるのですが、反抗鬼は親の怒りやイライラを喰って成長します。親が子どもの言葉に反応すればするほど、より厄介な存在へと変容していきます。しかし、逆に言えば親が相手をしなければそもそも反発しようがなく、やがて鬼はやせ細っていきます。徹底してエサを与えないという兵糧攻めこそが、まず第一の対処法であることを忘れないでください。ほとんどの場合、この方法で反抗鬼は簡単に鎮圧可能です。
しかし、世の中の多くの親御様が苦しんでいる反抗鬼は、本当にこんな簡単に退治できるのでしょうか?
ご推察のとおり、この方法は大きな欠陥を孕んでいます。
心得其の三:反抗鬼と戦わなければいけない
反抗期は手当り次第反発する時期なので、親が何かを言っても余計やらなくなることが多いです。何か言っても成果0どころかマイナスになることすらしばしばで、勉強させたいからと「勉強しなさい」などと言っても余計やらなくなるのがオチです。どうせ言っても言わなくてもやらないなら、言うだけ損なのでいっそ何も言わないというのも合理的かもしれません。反抗鬼を抑えるためにも親が子どもに対して怒らないのが一番らしいですし。
しかし、しかしですよ。やるべきことはやらず、やってはいけないことをやる、まだまだものの分別もつききらない未熟な子どもを放置するということが本当に正しいのでしょうか。反抗することで親という枷を取り払ったという誤った成功体験をした子どもはどう育つのでしょうか。それはきっと、親の願いとはかけ離れた形になってしまうでしょう。
さらに、残念ながら中学生に対する教育は反発させないだけでは成功とは言えないということです。中学生の時期は受験も控えており、なんとかして勉強に向かわせなければならないのです。勉強が好きだという子もいないわけではないですが、そんなのは非常に稀なケースであり、大概の子はできることなら勉強を避けたいと思っています。そんな子どもたちを勉強に向かわせるために、親は反発を承知で子どもの嫌がることを言わなければなりません。
「勉強しなさい」
と。
親は我が子の成長のために徒労を承知で戦わなければなりません。しかし、戦い続ければやがて精神は消耗し、だんだんとイライラしてきます。こうなるともう泥沼で、果のない戦いを続けることになってしまいます。
戦ってもダメ。戦わなくてもダメ。逃げることもできない。
詰んでる状態、クソゲーを通りこして無理ゲー。
しかし、ディスプレイに向かってコントローラーを投げつけるのは、まだ早い。