子育て相談室④ ~上手に叱るには
どこまでが正当でどこまでが不当か
子どもに対する体罰や虐待だけでなく、厳しい対応そのものが大きな問題になる近年、子どもを叱ることは以前よりも格段に難しくなっています。しかし子どもを教育する上で間違いを正していくことは絶対に必要であり、子どもを上手に叱れる人は親であれ教師であれ教育の巧者であるといえます。習い事等で子どもに先生をつける場合は、優しいだけの先生ではなく、叱るべきときに叱れる人かどうかを基準にするほうがよいでしょう。
ただ、きちんと叱ることは非常に難しく、前準備からしっかりやらないとただ子どもから反発を招くだけの結果に終わってしまうので注意が必要です。
ポイント①:叱る前の準備が大事
叱られたり怒られたりすると、叱られた内容が妥当かどうかに関わらず、子どもに強いストレスを与えることになります。ストレスを受けた際に反発させずに反省させられるかどうかは、一重に子どもから教育する者に対しての信頼があるかどうかに依存します。普段から感情をぶつけるような怒り方をしていたり、子どもの言うことだからと、子どもの言い分を軽く扱うような対応をしているといざ叱ったときも間違いなく聞いてもらえません。自身の記憶を手繰れば明らかなように、子どもだから親や教師の言うことは問答無用で従うなどということはありえません。人間関係は親子であっても鏡です。相手に話しを聞いてほしければ、相手の話しを日頃から聞く姿勢をもっていなければならないのです。
子どもを叱る場合は、この日頃からコツコツ積み立てた信頼という貯金を切り崩す必要があります。残高がない状況で叱っても反発を招くのみです。大事なのは事前に貯金しておく必要があるという点です。この意識があるかどうかで教育者としてのレベルがガラっと変わります。いざというときに備えて、日々無駄遣いがないように気をつけましょう。我が子相手であってもツケ払いや踏み倒しはできないものと心得てください。
しかし、使うべきときに使えないのはもっとダメです。叱るべきときに叱れない教育者は、子どもから緊張感を奪います。なんでも自主的に意欲的にやってくれれば言うことないですが、誰かに強制されなけばできない場面も多くあります。適度な緊張感は健全な生活をするための重要な要素です。
ポイント②:叱るときは具体的に
叱る際には極力感情を混ぜず・何について怒っているのか
・それがなぜ怒られるようなことなのか
・改善するためにどうすればよいのか
を明確にすることが大切です。年齢が低ければ低いほど、子どもが納得するまで時間をかけて対応する必要があります。勉強でもそうですが、ただ覚えただけのことは同じ場面でしか役に立ちませんが、理解したことは他の場面でも広く応用が効きます。
重要なのは「イライラを子どもにぶつけている」と誤解されるような叱り方をしないことです。感情でぶつけられたものは内容の理解より「どうやり過ごすか」に意識がいってしまいます。言って伝わらなかったり、同じ注意を繰り返していたりすると感情的になってしまうこともあるかと思いますが、大事なのは「なぜ怒られているのか」を子どもに理解させることです。理解させるのに落ち着いて話すのと語気を強めるのとどちらがよいか、無表情で話すのと怒った顔をするのとどちらがよいのか、冷静に適したものを選択してください。せっかく叱っても伝わらなければ何の意味もなくなってしまいます。叱るということも一種のコミュニケーションであるといえるでしょう。
ポイント③:ルールは妥当性よりも公平であることが大事
子どもを叱る状況は大雑把に言えば「何らかのルールを破ったとき」であると考えられます。よって、叱ることを考える上でルールそのものについても考えなければなりません。
ルールは一度決めたら、明文化されようとされまいと相手や条件に関わらず公平に運用されなければいけません。ご家庭ごとに様々なルールがあるものと思われますが、それが他の家庭と比べて厳しいかどうかを考えることに意味はありません。組織ごとに適したルールを課すことは必然です。
例えば、「家に帰ったら必ず手を洗う」というルールがある場合、遊びにきた友達の子に対しても家に入ったら別け隔てなく適用するべきです。我が子に対してだけ甘くも厳しくもするようなことは、極力しないほうがよいでしょう。例外が少ないほどルールは説得力と強制力をもちます。
また、特に気をつけるべきはルールを決めた者(保護者)にとって都合の悪いものであっても実行するということです。報酬を約束したのであれば四の五の言わずに与え、罰則を定めたのなら心を鬼にして執行してください。都合が悪いからと盤面をひっくり返すような人の決めたことを、子どもが真面目に従うはずがありません。状況に応じていちいち変わってしまうようなルールは「言い訳をする」ということを子どもに覚えさせてしまうので、無駄を通り越して害悪です。
「約束を守る」「言い訳をしない」
口で言うのは容易いですがこれを子どもに教育するのは並大抵ではありません。言葉で教えられることではないといってもいいでしょう。教育する側が覚悟をもって常に範を示し続けなければいけません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。愛情を注ぐことと甘やかすことは紙一重です。厳しくする側にも「嫌われてでも叱るべきは叱る」覚悟が必要です。しかし厳しくするばかりで愛情を感じられなくなれば子どもの心は枯れてしまいます。上手に叱るのに一番重要なことは、やはり常日頃から注意深く子どもを観て、話しを聴いていくことだと思います。
子どもの叱るのはとても大変です。叱られる方もストレスでしょうが、叱る方だってただ事ではありません。これが反抗期ともなればさらに苦労は倍増します。せっかくそんな思いをしてまで叱るのであれば、せめてちゃんと伝わってほしいと願うばかりです。