小学生の親のための勉強会 ②
今回はちょっと堅い話になりますが、中学受験についてお話したいと思います。日野市は私立中学がないため中学受験をするご家庭は決して多いとは言えませんが、市立の中学以外の選択肢があることを知っておいて損はありません。少し長いですがぜひご一読ください。
中学受験とは
日本では中学校までは義務教育であり、特に受験をしなくても地元の中学校に進学することができます。さらに我らが日野市では、住んでいる地区によっていくつかの中学校から希望の進学先を指定することも可能です。(この制度は近々なくなるとの噂もあります。)特別なことをしなくても誰でも中学校に入ることができのに、それでも多大なるお金と手間をかけて中学受験をするメリットとは何なのか、順番に見て行きましょう。
まずは中学校の種類を知ろう!
入学するために受験が必要な中学校のうち、特に代表的なものは「私立中(附属型)」「私立中(進学型)」「都立中」「国立中」の4つです。それぞれ学力検査に特色があり、志望先によって対策が全く異なるため中学受験のために塾を探す場合は特に注意が必要です。
まずはおおまかに各中学の特色と、日野市周辺にある具体的な中学校名を見て行きましょう。
私立中(附属型)
このタイプの私立中のメリットは、何と言っても「早稲田」「慶応」「明治」「中央」「日大」といった有名私大に受験なしで入学できるということでしょう。俗にいうエスカレーター式というやつで、日々の勉強をきちんと頑張れば厳しい受験をしないで済む権利は他に代えがたい価値があります。ただし、このタイプの中学は中学から大学卒業までの約10年間、計1500万円にも達する高い学費(文科省調べ)を払い続ける必要があります。また、大学進学時の学部は成績順に選ぶため、成績下位だと希望学部に進学できない可能性が高いです。
受験難易度は大体が大学のレベルに比例しますので、名の知れた大学の附属に入学するためには非常に厳しい受験勉強をすることになります。受験科目は一般的には国算理社の4科目で、通常小学校では習わないような内容のテストとなるため、受験するためには小学生の間に塾に通うことが必須になります。
私立中(進学型)
このタイプの私立中はほとんどが中高一貫で、高校受験しないで6年間通うことになります。公立の学校と違いカリキュラムが柔軟に組めるため、予備校ばりの受験指導を行っている学校も多く手厚い指導が望めます。反面、授業の進度が速く、宿題の量も多くなるため勉強の負担が大きくなります。ついていける子はいいのですが、落ちこぼれると悲惨です。もちろん補習などでフォローしてくれますが、毎回呼び出されることになると子どもも家庭もものすごい負担になります。
デメリットとしては私立なのでやはり学費が高いことが挙げられます。これは私立受験全般に言えることですが、入学後の学費だけでなく、中学受験に向けて小学4年生頃から塾に通うことになるため塾代も相当な額になるということも覚えておいてください。科目数も多いので個別授業で全て行うと恐ろしい金額がかかります。
受験難度は学校によりけりでかなり幅広い選択肢がありますが、進学実績のいいところほど入学試験も厳しくなります。
都立中
私立中(進学型)と同じく中高一貫であり、受験指導が充実しています。私立の進学校並の指導を受けられる上に学費がとても安いので、入学希望者が多く毎年超高倍率の受験が繰り広げられています。受験科目は適性検査と呼ばれる方式で、作文や論述が中心となる私立中の学力検査とは似ても似つかないような代物です。当然受験に向けた対策も私立受験とは異なるので、特殊な事例を除き私立中と都立中の併願はできません。
私立中の受験と比べると受験科目が少ないので小学生時の塾代の負担も軽いこと、さらに仮に受験に失敗しても「地元の公立中学」という絶対の受け皿があるため、「ダメ元」で受験するようなライトな受験者層が多いことも高倍率に拍車をかけています。新しく導入される大学入試の傾向も都立中入試に近くなりそうなので、今後さらに人気が加速することも考えられます。
国立中
中学受験においても最高レベルの難易度を誇るタイプです。まずもって「ずば抜けて勉強ができる子」が集まるため進学実績も優秀なのですが、国立中学は様々な点で他の中学と異なるために注意が必要です。国立中学は文科省が管轄する実験校という位置づけなので、進学型の私立中学や都立中のように“大学受験に向けた勉強”をしていません。教育実習生による授業が多かったり、特殊なカリキュラムが行われることもあります。「学力不足は自分で補う」という方針のため、補講や夏期講習といったことも行われません。また、日野市から通うことができる学芸大附属小金井中学では、中学から高校への内部進学率は3割程度しかありません。普通に高校受験をしなければならない確率が高いことを十分考慮してください。また、仮に高校に進学できたとしても大学への内部進学は原則ありません。こちらも普通に受験することとなります。
小学・中学受験においてとても人気がある国立中はその特色がデメリットに感じてしまう人も多いです。進路選択の際は十分注意しましょう。
まとめると以下のようになります。
私立中学 | 公立中学 | |||
---|---|---|---|---|
私立中(附属) | 私立中(進学) | 都立中 | 国立中 | |
高校への内部進学 | ◎ | ○ | ○ | △ |
大学への内部進学 | ○ | △ | ☓ | ☓ |
授業料 | 高い | 高い | 非常に低い | 非常に低い |
メリット | ・大学受験がない ・設備がよい |
・受験指導が充実 ・設備がよい ・面倒見が良い |
・受験指導が充実 ・授業料が安い |
・学習環境がよい ・勉強以外も盛ん ・授業料が安い |
デメリット | ・授業料が高い ・進路変更できない |
・授業料が高い ・勉強の負担が大きい |
・入試が超高倍率 ・勉強の負担が大きい |
・入学基準が厳しい ・内部進学率が低い ・受験対策をしない |
周辺の中学 | 早稲田実業 明大中野八王子 中大附属 |
穎明館 帝京大 八王子学園 |
南多摩 立川国際 |
学芸大附属 |
中学受験をする理由
中学受験をする理由は人によって様々です。上記で示したような中学に魅力を感じて積極的な理由で受験される方も多いですが、逆に地元の公立中学校が学級崩壊していたり、友人関係が上手くいかず知り合いのいない中学に行きたいという方もいます。特に私立中学では生徒の生活管理もしっかり行ってくれるため、いじめや非行といったトラブルも公立中学に比べて格段に少ないという点は、進学実績以上に魅力を感じる方も多いはずです。私としても、私立中学に最も魅力を感じるのは受験指導よりも生活指導の確かさです。地元の公立中学へ不安を感じる場合は一考する価値があると思います。
特に後者の理由、すなわち地元の中学に通いたくない理由がある場合は都立中の受験ではなく私立中の受験をすることをおすすめいたします。先に述べたように都立中は受験倍率が非常に高い上に検査方法も特殊です。十分に対策をしていったとしても結果が振るわない可能性があります。その点私立中学ならば、複数回受験できるため「すべり止め」を作ることが可能です。通われる塾で十分に話し合って頂ければ適した学校が見つかることでしょう。
中高一貫校の功罪
私立中学でも都立中学でも「進学校」を謳っている学校は中高一貫であることが多いです。「中学3年分+高校3年分」の計6年分の学習を5年に圧縮することで、1年間みっちり受験対策に時間が割けるため大学受験を有利に進めることができる、というのが中高一貫教育の主張です。
私はこのことについて半分は賛成です。TRAINは小学生から高校生まで指導可能な珍しい塾なのですが(小規模な学習塾で、映像授業などではなくきちんと高校生を指導できる学習塾はほとんどありません。)特に高校生を見ていると、カリキュラムを前倒しさせてどんどん勉強させないと大学受験には間に合わないということを痛切に感じます。それゆえに中学高校の勉強をいち早く終わらせようという方向性は悪くないと思いますが、中高一貫にはそんなメリットを帳消しにしてしまうほどのデメリットがあります。
それは
高校受験がない
ということです。高校受験がない分だけじっくり腰を据えて6年間勉強できそうなものですが、残念ながら人間そう簡単にはできていません。やはり受験という目標があるのとないのとでは中学範囲における学習の取り組み方が全く違います。
また、高校入学の段階できちんとレベル別の高校に振り分けられるため、大学受験の勉強はよりマッチした環境で受けることが可能です。一部の中高一貫校は高校からの受け入れも行っていますが、当然ながら附属中学から内部進学した生徒とレベルが異なると困るので相応の学力を求められます。そうなると、高校受験をくぐり抜けて来た生徒の方が、中学から一貫教育を受けている生徒よりも学力が高いということもよくあります。
入学後の成績分布の例を上げる下の図ようになります。
本当に成績優秀なトップ層は、先取り教育が奏功した中学からの内部進学生が多いですが、取り残された生徒は高校から入学した生徒に敵いません。嫌な話になりますが、進学校は進学実績をもって生徒を集めるため結果を出せそうな優秀な子ほど手厚く見ることになります。下支えよりも上を伸ばすことを優先するため、授業やテストのレベルも難易度が高くなりがちで中位層はテストのたびに苦労することになります。しかし、厳しい環境で勉強するということは決して悪いことではなく、一般的な公立中学に通うよりは学力が向上することが多いと思われます。 結局のところ、子育ての方針としてどこまで学力を重要視するかということになると思います。受験は良くも悪くも子どもの将来に大きく影響を及ぼすため、しっかりと検討していただきたいと思います。
中学受験をする場合に知っておくこと
中学受験を目指す場合に知っておいてほしいこと、心して頂きたいことがいくつかあります。
① 受験する中学のタイプによって塾を選ぶこと
② 難関校を受験する場合は遅くても小学5年生からは塾に通うこと
③ 私立・国立型の場合は塾の年間授業料が100万を超える場合もあること
④ 中学受験は親の負担が大きいこと
特に④!中学受験をする場合は子どもも大変ですが、それ以上に親も大変です。経済的な負担もさることながら、小学生が負荷の高い受験勉強を行うためには家庭のバックアップが欠かせません。もちろん勉強そのものを教える必要はないですが、スケジュール管理はどうしても家庭の協力が必要ですし、進んで勉強に取り組めない子であれば横で一緒に勉強してみせるくらいのことをやらねばなりません。塾が忙しい時期は晩御飯の時間などもそれに合わせて変えていく必要もあるでしょう。
中学受験は決して特別なことではありませんが、様々な面でコストが高いため中途半端にやってもいいことありません。やるからには覚悟を決めてお子様と一緒に取り組んでいただければと思います。
ちょっと長くなりましたが今回はこれでおしまいです。次回は公立中学校に通う子についてのお話をしていきます。
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